2009年4月25日土曜日

人生で一番感動した食事

日本滞在中の大きな楽しみの一つは「食べること」です。特に季節の素材を生かした料理に出会うととても幸せ。4月は食の世界もさくら満開です。身近なところでは、桜餅、桜餡の鯛焼き(超美味!)、桜タルトなど甘味系も目が離せません。

そんな中、今回私たちは今までの人生で一番すばらしいといえるディナーを体験することができました。大変お世話になっているO社長が精進料理の料亭 愛宕下 醍醐にMさんと私たち二人をお招きくださいました。20年ほど前にもO社長に連れて行っていただいたのですが、その時もお料理はすばらしく、店構えはお庭が素敵な一軒家でした。愛宕の再開発で今はビルの中なので、趣はどうかしら?と前回を上回る経験ができるとは思ってもいませんでした。
到着すると番頭さんがビルの下まで迎えに来てくれるところはさすが料亭。入り口は打ち水もしてあり、すでにビルの中ということを忘れます。全室個室で案内された部屋からもライトアップされたきれいな庭を見ることができます。

静かな室内には素敵な床の間があり、掛け軸、お花、香炉が飾られています。席がゆったりとした掘りごたつなのも、ダニーだけでなく私もうれしい!


床の間を眺めている間に、私たちのコートや荷物はきれいに整理されて部屋の隅へ。じきに折敷が運ばれ、女将さん殻の挨拶もいただき、まずはビールで乾杯!やっぱりビールはエビスが好き。

前菜の筍田楽は、木の実味噌の鮮烈な香りと風味が、春の大地の味である筍の甘みを引き立てます。小附は若布独活酢。やわらかな若布と土っぽい独活の味がやさしい出汁とよくあって、これからのお料理への食欲と期待感が高まるのでした。


お吸い物はもずく椀。揚げた蓮根の上に針生姜がのっています。精進料理とは思えないしっかりした味の出汁はもずくの塩気もあるのでしょうか。揚げ蓮根はほっこりしていておいしい、生姜も食欲をかきたてます。 お凌ぎは手打ちそばのとろろかけ。薬味には芥子が添えられていて、これがまたすごくあうんです。初めての組み合わせにびっくり! そば好きの私たちには大満足の一品でした。 八寸は、見た目もきれいなお花見団子。里芋団子、じゃが芋団子、茄子田楽、桜餅麩、松風杏子。味も歯ごたえも彩りもそれぞれの素材を十二分に生かしつつ、きちんと仕事がしてあるこの一品は、味もプレゼンテーションもすばらしいの一言でした。お酒は兵庫黒松白鹿の純米酒。仲居さんによると、初代女将が「うちの料理に一番あうのはこのお酒だ」とのこと。以来、黒松白鹿の吟醸と純米しか置いていないそうです。最高のペアリングでした。
煮物は鳴門大根。厚くかつら剥きにした大根のあいだに薄揚げをはさんで煮込んだものに、分葱と芥子が添えられています。渦巻きだからなるとかぁ、と思って口に運ぶと、出汁をたっぷりすってホクホクに炊かれた大根に薄揚げの油が程よいコクを与えていて、滋味あふれるやさしい味。これも精進料理の出汁とは思えないしっかりしたお味でした。精進揚げは茄子、茗荷、サツマイモ、そしてサプライズはこんにゃく!素揚げした籾殻つきの稲穂は、軽く塩をふっておいしくいただきました。そして今回はO社長が特別コースを注文したので、と女将さんじきじきに運んできてくれたのは、りっぱな無花果の天麩羅! あんの程よい塩気が無花果のほのかな甘さを引き立てて、わさびのアクセントもにくい!出てくる一品ごとに驚きを隠せません。 箸を運ぶ手もゆっくりになり、一口ずつ味わっていただきます。

強肴(しいざかな)は客にお酒を勧めるために出される一品。胡麻酢で合えた赤芽大根、きのこ類はしゃきしゃきした触感がうれしく、また揚げ物のあとの口の中もさっぱりとします。 純米酒を注ぎあう手もすすんで、お庭の景色はもちろん、折敷の上の景色も楽しみながら、みんなほろ酔い加減で夜はふけていきます。

箸洗いはつくね団子。蓮根で作られたつくねは、触感もやわらかく、そして竹紙昆布という薄くけずった昆布もうまみを添えています。お野菜だけでこの味。。。もう脱帽です。野菜好きの私はともかく、肉も魚も大好きなダニーも、一品一品運ばれてくるたびに、新たな感動を運んでくれる料理に感心することしかり。
 
御飯はなめこ雑炊でした。たっぷりの御飯にたっぷりのなめこ、山ごぼうが歯ごたえを添えます。御飯大好きの私は、味見だけで満腹のダニーの分もぺろりでした。文句なく、最高のお雑炊でした。香の物もおいしくいただきました。 水の物で出てきた苺とパパイヤのおいしさにもこれまたびっくり。苺は今人気の「あまおう」という種類だそうで、本当に甘かった。    
最後の甘味は、創業時から出しているというお汁粉。
小さな蓬餅が入って、最後まで春の風を感じさせてくれました。
お料理からセッティングからサービスから、そしてもちろん楽しい会話まで、これほどすべてがそろった食事でした。最後の最後まで驚きと感動に満ち満ちた夜となりました。四季の献立すべてを味わいたいねと今でも二人で話しています。

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