2009年2月18日水曜日

”いまここ”のススメ

たまった雑誌を整理していたら、興味深い記事(What It Takes to Survive by Ben Sherwood - Newsweek Feb. 2, 2009)を見つけました。この記事は危機的状況で助かる人と助からない人の違いについて事例に基づいて論じています。

サバイバル心理学を研究する英ランカスター大学のリーチ教授は、1987年のロンドン地下鉄の大火事を未だに鮮明に思い出すそうです。駅の地下から煙が上がっているのに、ラッシュアワーのエスカレーターは、いつも通りに通勤客を地下のホームに送り続けました。火災が発生していたのに駅には電車が到着し続け、結局21名の犠牲者が出ました。「自分の目で見ていることが普段の状況と違う場合、人はそれを無視して普段通りの行動を続ける」この心理を分析麻痺というそうです。

危機状況に陥った人々は、10−80−10の割合で3つのパターンに分けられるといいます。10%の人々は落ち着いて状況を分析し行動をとる人。80%は驚き集中力が狭まり、汗をかいたり体が麻痺したりして決断と行動が鈍ってしまう人。これはある意味、予想される反応です。災害に巻き込まれたら誰でもびっくりし困惑します。しかしいかに早くそこから抜け出して行動できるかが生き残りへの道となります。そして絶対さけたいのはパニックに陥ってしまう残り10%のカテゴリー。人間はパニックに陥って分析麻痺を起こすとベストの行動とは真逆の反応をしてしまうこが多いそうです。

集中しているつもりでも実際見落としていることが多い、というのは誰でも経験があると思います。ある心理実験で被験者は新聞を渡され、そこに載っている写真の数を数えるようにいわれます。この実験は2秒で終わる人もあれば、数分かかる人もありました。違いは何か?2秒で終わった人は、2ページ目の大きい見出しに気づいたのです。そこにはでかでかと『この新聞には43の写真が載っています』と書いてありました。これは引っかけではなく事実でした。人はあることに集中すると他のことが全く見えなくなってしまうことがあります。他にも同じ心理状態を示す有名な実験があります(by Daniel Simons and Christopher Chabris)。ハーバード大学のエレベーターロビーで数人の学生がバスケットボール2個をパスし合っています。この映像を見ている人はパスの数を数えるようにいわれます。2分を切る短い映像ですが、途中でゴリラの着ぐるみを着た人が登場し真ん中で立ち止まり、胸を叩くポーズをして、そのまま横切ります。しかし、映像を見ていた56%の人たちはゴリラの存在に全く気づかなかったといいます。私もこのビデオをあるイベントで見ました。ゴリラが歩いてきたときは全く気がつかなかったのですが、正面を向いて胸を叩いたとき、やっとあれ?と思い、でもパスは数えなくちゃいけないし。。とすぐに意識を戻したのを覚えています。この状態を心理学者はInatentional Blindness(非注意性盲目)と呼んでいます。

どうしてゴリラ登場!のような場違いな映像に気がつかないのか? 事実として、1)変わった映像が必ずしも注意を引き起こす訳ではない、2)どんなに視力がよくても人間の目は焦点を合わせたところから2度の範囲外は高解像度で見ることができないからだそうです。普段から自分の見ていることがすべてでないと理解すること、いつ何がおこっても不思議でないという心構えを持つことがサバイバーの条件だといえそうです。

共時性と運の研究を専門とするDr. Wisemanによると、ゴリラにせよ、新聞の見出しにせよ、気がつかなかった人の多くは、気づいた人に比べて神経症的傾向が強く、生真面目でストレスに影響されやすい性格だったそうです。運の善し悪しは天から与えられたものではなく、考え方と行動で強運を引き寄せることができるとDr. Wisemanは述べています。そして運の強い人は、いつ何がおこってもそれを受け入れ、自分にプラスになるよう理解するという特徴があるといいます。

記事の中に運の強さをテストするwww.opportunitysnowhere.comというサイトが紹介されていました。”いまここ”の大切さをあらためて考え、日々の生活にいかしていかなきゃ!と思いを新たにしました。

0 件のコメント:

コメントを投稿