翻訳の仕事をを通じて、微妙な言葉のニュアンスや表現方法に想いを巡らすことが増えました。英語の語彙と慣用句の豊富さにあらためて驚いたり、同じことを伝えていても、言葉の選び方でトーンがかわり受け手への印象も変わるでしょう。
英文和訳では、日本語オーディエンスにどう響くか想像力を働かせることができます。内容が正確であることは前提条件ですが、堅い直訳より意訳のほうがわかりやすい、でも端折ってはいけない。難しいのは英語でも主張を遠回しに表現しているとき。よい例が思い浮かばないのですが、その独特な言い回しを直訳せずに日本語に置き換えるのに苦労しました。謙遜したり主張を遠回しにやわらかく伝える思いやスタイルは同じでも、表現の仕方がちがう。その場合どこまで意訳するのか。
和文英訳でも、受け手の立場を考えて同じ努力をしますが、英語を母国語とする人たちの表現方法を通してどう響くかを想像するには、私には限界があります。それでもただ訳せばいいと淡々とやるより、その文書が読まれ/音声になる環境を自分なりに理解するようにします。しかし和文英訳は内容がファジーなものであればあるほど難しいです。
映画のタイトルなどを見ても、意訳はたくさんあります。
よくあるのは内容が想像できるよう補足したもの。
The Apartment = アパートの鍵かします
Chariots of Fire = 炎のランナー
Melody = 小さな恋のメロディー
タイトルの単語を使わず訳で内容を表したもの。
Bonnie & Clyde = 俺たちに明日はない
An officer and a Gentleman=愛と青春の旅立ち
Out of Africa = 愛と哀しみの果て
古い映画ばかりですが、こんな感じ。
原題=日本語直訳がビッタリという例もあります。
From Russia with Love = 007 ロシアより愛を込めて(007は補足されていますけど)
「存在の耐えられない軽さ」(Unbelievable lightness of being)は、原題=日本語直訳がぴったりのいい例だと思います。英語でもはっとさせられるタイトルです。
最近日本では武士語がはやっていると読みました。
メールなどで使ってみたい武士語ランキングでは、かたじけない、〜でござる、よきにはからえ、お主、それがしなどが上位を占めています。
こんなサイトまであります。
「和文英訳でも、受け手の立場を考えて同じ努力をしますが、英語を母国語とする人たちの表現方法を通して響くかを想像するには限界があると感じます。」を変換してみたら、
和文英訳とはいえ、受け手が役目をば存念て同じ修行をばしんす、、メリケン言の葉をば祖国語と致す輩たちが表現手立てをば通して響くやをば想像するでござるには、限界がござるであると感じ候。
ってな具合。このサイトではさむ〜い死語もリストアップされています。知らない言葉もたくさん。栄枯盛衰諸行無常。かつて栄え(?)て今は死語というのもある種のステータスを言葉に与えるのかと感心してしまいました。英語でも同じことでしょうが、TVを見ない私は日常生活で流行言葉(?)に触れる機会もなし。今アメリカのティーンたちはどんな言葉を話しているのか。ちょっと興味が出てきました。
翻訳・・・ものすごく懐かしい響きです。と言うのも実は私の父は翻訳の会社をやっていたものですから。92年に76歳で他界しましたが、入院先の病室で期限の迫った翻訳のため、タイプライターを病室に持って来て欲しいと看護師さんに頼んで、とんでもない!と怒られていました。若かりし日にその時代としては非常に少なかったアメリカの大学留学をした父、身に付けた英語力のおかげで後に家族を支え、子供たちを育てることが出来たのです。人生何が役に立つかわからないから、なんでも一生懸命やりなさい、といつも言われました。父は中国語も堪能で戦時中は満州に通訳として赴任していました。ドイツ語、ギリシャ語、ラテン語、など次から次とマスターしていた父の血をもう少し私も受け継いでいたらな~、と今更ながら思いますが・・・残念!
返信削除いまここさん、翻訳のお仕事、大変でしょうけどやりがいのある素晴らしいお仕事だと思います。精一杯エンジョイしてください♪応援してます(^^)b
Mikkoさんのお父様は天性の語学の才能をお持ちだったのですね。すばらしい!きっと頭が柔らかくスマート、オープンマインドな方だったのではと思います。語学を身につけるって文化にも幅広く興味を持ってマスターできると感じていますので。
返信削除私の場合はキャリアというよりご縁でいただける仕事をやりながら、勉強させてもらっているという感じですが、頑張ります。
翻訳、パートタイムのプロジェクト管理、シェフ業と全く違うことをやりながら結構楽しんでいます。応援心強いです。ありがとうございます!