2009年11月13日金曜日

DV8 Physical Theatre

UKベースのパフォーマンスグループ、DV8 フィジカル シアターの最新プロジェクト,”To Be Straight With You”を観ました。今まで一番感銘を受けたパフォーマンスといえるほど、すばらしいものでした。

1986年にLloyd Newtonが設立したこのグループは、社会的、政治的、心理的テーマをベースに振り付けされた舞踏でメッセージを発しています。世界各国をツアーし、BBCによって映画化された作品もあります。振り付けの斬新さもさることながら、照明デザインがすばらしく、ミニマルな舞台に限りない奥行きとストーリーを与えています。

今回の作品のタイトル「To Be Straight With You」は「率直に言いましょう」という意味ですが、このStraightには、「非同性愛者」という意味もあります。この作品でNewtonは、自身が体験した同性愛者への差別、迫害、暴力、また世界各国でみられる宗教的、人種的な問題を描いています。舞踏とともにダンサーが語る台詞は、イギリスで実際に85人にインタビューした生の声をもとにしています。ちなみにポスターの「縄跳び男性」は、縄跳びをしながら(後ろ回しや連続二重飛びも!)長い台詞を数分しゃべり続けていた脅威の人物。

90年代はじめに同性愛者の行進がロンドン南部のBrixtonで行われたとき,Newtonは当時ボーイフレンドだったインド人と一緒に参加したそうです。Brixtonはアフリカやカリブ海諸国からの移民が多く住む地域で、Eddy Grantのヒット曲 "Electric Avenue"もあります。余談ですが、ロンドンに住んでいたとき比較的近くだったので、新鮮なオクラを仕入れにマーケットにいったり、ヴィクトリア建築の映画館にも足を運んでいました。

そのBrixtonでNewtonは敵意に満ちた罵声を浴びます。移民である彼ら自身、少数派として社会的差別を経験しているはずなのに、他の少数派グループに対しては冷酷であることに驚きます。また2006年にイギリスのテレビ局が作成したイスラム教同性愛者のドキュメンタリーでは、200人のインタビューが行われましたが、顔を見せることに承諾したのはただ一人。後の人たちは差別や仕打ちを恐れていたそうです。このような背景からNewtonは、宗教、人種,性別,性的嗜好などのビリーフが作り出す複雑な社会環境を舞台にしようと思ったそうです。

世界の多くの国々では、同性愛が犯罪として裁かれ実刑になるという事実も知りました。家族や社会から切り離されても自分の道を生きる人たち。本当の自分を偽って社会に順応しようとする人たち。差別と暴力に正面から立ち向かう人たち。重みのある台詞なのに、暗さより力強いエネルギーを感じました。

SFダウンタウンのYerba Buena Art Center
NYと並び大きなゲイ コミュニティのあるSan Francisco。舞台が終わって満場のスタンディングオベーション。その後もロビーは熱気であふれていました。私たちは会場にいた数少ない非同性愛者でしたが、枠や境界線をこえて結局つながっているんだと感じた夜でした。16作品ある彼らの作品をすべて観てみたいです。

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