日の出はみられそうもないので散歩に出ました。
宮川にかかる中橋からの眺めです。時計は7時をまわり空は若干明るさを増してきました。 足跡もついていない古い町並みは静まり返っています。
小一時間散歩して部屋に戻れば山の向こうから朝陽がお出ましです。朝ご飯は食堂が閉まるぎりぎりに駆け込むとして屋上の温泉へ。雪舞う露天風呂は最高でした!
散歩に朝風呂で程よくお腹がすいてきた。色合いのせいかぱっとしないけれど、とても美味しい朝ご飯でした。サラダバーを見逃していてこの後たっぷり生野菜もいただきました。
今回高山を訪れたのは、父母が新婚旅行の終わりに立ち寄った料亭でお昼をいただくためです。荷物を整理していたら両親の結婚式と新婚旅行のアルバムがでてきました。珍しく父がメモ付きで整理してあり、ある料亭のお品書きと橋袋がきれいに保存されていました。
父のメモは「献立の字もうまいが料理はNのおごりとあって一層おいしかったです」と茶目っ気たっぷり(笑)。達筆すぎて全部読めないお品書きを見て、ふと「このお店まだあるかな?」と検索してみたらありました。お庭や建物は築250年、創業200年になる老舗でした。営業は不定期のようでしたが、電話予約は受けているとのことだったので、最終日のお昼にお願いしました。母が選んだ精進懐石のお店角正さんで食事をすることが高山に来た理由であり、旅の最後のイベントです。
チェックアウト後、荷物を預けてまず陣屋へ。
人出が少ないからか朝市場はひっそりしていました。
漏れ入る光が柔らかい。木造建築はすきま風はあったんでしょうが、自然光の取り入れ方が素敵です。昔の家の雨戸、こうだったな。
柿葺(こけらぶき)屋根の修繕用の木板が沢山ありました。
屋内の見学を終えてお庭を歩いていたら雪が激しく降り始めました。宮川朝市も店じまいが早い。
大粒の雪がひっきりなしに落ちてきます。 音も人影もない道を歩くのが楽しかった。
予約時間を目指して坂を上ります。
長いこと歩いたので流石に足先は冷え冷え。それでも庭を見渡す離れは暖房がきいてぽかぽかですぐに暖まりました。
掛け軸は「雪」、お花は水仙に早咲きの菜の花。
お箸袋も昔と同じ。アルバムは持って来れなかったけど、お品書きと橋袋が張ってあるページの写真を撮ってきて、女将さんと若女将さんにみてもらいました。
女将さん曰く、両親も恐らくこの離れで食事をしたであろうとのこと。
蓮根真蒸は草餅が入っていて柚子風味でした。
筆跡こそ違えど、お品書きの紙も当時のままに。父母は十代目、私は十二代目のご主人の料理をいただきました。
おそばも手打ちです。
ゆべしの大葉巻き揚げは濃厚なお味。杯には黒豆。蒸したご飯が椎茸の下に隠れています。炊き合わせは筍、生湯葉、菜の花、糸人参に木の芽。春の息吹です。
姫川百合根ご飯が最高!食べられない分は折り詰めにしてくれました。
時折落ちる雪の音にはっとさせられ、止まった時間がまた緩やかに流れはじめる。そんな繰り返しで三時間が過ぎました。
両親の結婚式は秋でした。紅葉を愛でながら秋の味覚を楽しんだのだろうな。
春には寿退職するという仲居さん、嫁ぎ先は白川郷だそうです。女将さんの暖かい笑顔に見送られて、現実世界に戻りました。
ホテルへの帰り道、軒下にかわいい雪だるまを発見
こちらも時代が止まったかのような薬局。時間があれば中も覗いてみたかったです。帰りの特急列車は途中区間で雪のため運転が止まり到着がかなり遅れました。自由席の人たちは大変だったようですが、40分ほど遅れて無事名古屋に着きました。
折詰ご飯はお供え用に持ち帰りきしめんを食べて帰ろう!と思いつき、指定券を取り直して、勝手知ったる駅チカへ。腰のある、それでいてしなやかな麺に鰹節の香りが立ちのぼり、鼻から食欲がそそられます。
一週間の旅も帰路を残すだけとなりました。思い立ってレイルパスを買ったもののぎりぎりまで決まらなかった旅程。久々の一人旅、久々の日本でレンタカーでの移動など緊張しました。実際始めて見るとなんとかなるもの。父母の足跡を辿ったというと大げさですが、旅の間は実家で片付けをしていた時より明るい気持ちでいられました。又一つ昔に遡ったお陰で前に進めた、そんな感じです。一人旅日記、これにて終了。
自分のルーツをたどる旅。素敵です。きっとおねーちゃんは、この旅の後、違った角度からいまじぶんがここにいる事を新鮮な思いで実感できたのだとおもいます。
返信削除さとちゃん、いつもありがとう。ルーツというほどのモノじゃないけど、とても意味のある一週間だったことは確かです。(なぜかお返事反映されてなくて、再投稿です)
削除読んでいて涙が出ました。
返信削除出逢った頃の両親はどんなだったんだろう…
時代は異なりますが、宮崎駿の”風立ちぬ”を観た時に私も思いました。