2010年9月24日金曜日

味噌汁の奥深さ

祖母から母へ、そして今、私の手元にあるこの本。

 

辻留の辻嘉一氏著、婦人画報社発行、題字は北大路魯山人。初版は昭和34年、手元にあるのは39年の41版。当時の人気本だった様子がうかがえます。


豆味噌、麦味噌、米味噌の違い、ブレンドの仕方、出汁の立役者鰹節や昆布のこと、実の切り方、なめらかな舌触りの出し方などなど、題名の通り味噌汁のすべてを網羅しています。味噌汁説法なる随筆集も読み応えがあります。漆のお椀も様々な時代の物が紹介されていています。漆といえば、アメリカ全土に生息するpoison ivy(ツタウルシ)にかぶれてしまったEさんから聞いた話。かぶれ成分は英語で、漆を語源とするUrushiol(ウルシオール)と言うそうです。そういえば、漆器の総称もjapanですよね。

味噌は昭和30年代でもすでに「ほとんどがアメリカ産の大豆に依存しています」と書かれていて驚きました。昔は農閑期を利用して12月頃から豊富にある新大豆を使って味噌作りがなされていたそうです。麹を作るにもいい気候条件で冬の間に大量に仕込みが行われ、田植えが始まると味噌作りの青年たちは田へ戻り、後に残った醸造家が家族だけで味噌を売るというビジネスモデル(笑)だったようです。塩と豆(麦、米)と麹で作られながら、ちゃんと味噌という味になる。時間がかかり効率は悪くとも、天然醸造味噌と速醸造味噌の味のちがいは天と地ほどと。美味しい味噌は水に溶けにくいそうです。

お味噌汁の実によせる思いと考察も奥深いです。巻末の「味噌汁の”み”の事典」には、豆腐だけでも、焼き豆腐、揚げ豆腐、摺り流し豆腐、団子豆腐、一夜凍り豆腐など9種が網羅され、材料のよしあしの見分け方も学べます。伝統的懐石料理に乗っ取った物ばかりでなく、ハムとトマトと牛乳なんて組み合わせもあります。

付録「朝の味噌汁献立暦」では、四季ならぬ「中秋から歳暮」「正月から晩春」「首夏から初秋」という三季に分けて180種類の組み合わせが網羅されています。それぞれの季節の枠には、こんな言葉が寄せられていました。

「味噌汁の美味は汁と’み’が渾然融和して、舌の上をなめらかに通るところにこそあります」
「一椀の味噌汁の中には、家族の健康としあわせを美味と共に盛りこみたいものであります」
「季節季節の味を一つのお椀の中に、豊淳な味噌の香りとともに入れる喜びを尊びましょう」

この本を開く度に、溶けにくい味噌というのを山椒の枝で作ったすりこぎでごりごり摺って、味噌汁を作りたくなります。

3 件のコメント:

  1. う~ぅ お味噌汁のみたくなっちゃった!

    imakokoさんは何味噌派?
    好きな具は?

    私は麦味噌が大好き。
    具はキノコ系・・・か、南瓜も捨てがたい。

    家庭の数だけ、もしかしたら人の数だけ
    味噌汁ってバリエーションが存在するのかも
    しれませんね。

    味噌汁万歳

    jai jai

    返信削除
  2. 私も麦味噌好き!思いのほか手に入りにくいです。この前日本の生協通販で仕入れてきました。やさしい甘みがうれしい。しっかり豆の味がする八丁味噌も大好き。具は旬のものをおいしくいただくのが一番かと。今はそれこそお芋、カボチャかな。ありがたいことにこの辺りはそれこそ何でもあるので、バラエティ豊かです。

    よくO氏が、スープは’飲む’んじゃなくて’食べる’んだ、と言っていたの覚えてる?味噌汁も”食べる”がしっくりくる具沢山汁は栄養価もあってすばらしい料理だと思います。

    返信削除
  3. 覚えてますよ。

    実は、コメントを書くときに悩んだの。
    「たべる」にするか「のむ」にするか(笑)

    仰るとおり、お味噌汁は食事のオマケじゃなくて、
    歴とした一品!すばらしい料理ですね。

    jai jai

    返信削除