2011年6月30日木曜日

Never Let Me Go

邦題「私を離さないで」は昨年公開されたイギリス映画です。最近DVDで観て、久々にいろいろな意味で揺さぶられました。監督はマーク ロマネク(Mark Romanek)、原作はカズオ イシグロの小説。彼の小説は「日の名残」をはじめとして、時代設定は過去にさかのぼります。「私を離さないで」も例外ではありません。しかし意表をつかれるのは、設定が1970年代でありながら、オープニングに映し出されるテキスト。「1958年に起こった医学の飛躍的進歩により、人間の寿命は100歳を越えた」と。

そしてイギリスの田舎にある寄宿舎の映像になり、そこで学び暮らす二人の女の子と一人の男の子がメインキャラクターです。次第に彼らが医学が飛躍的進歩を遂げた世界でどのような位置づけにあるのかが明らかになっていきます。

ユートピアの反対語はディストピア(dystopia)。何処にもない場所という意味のギリシャ語ベースの造語が理想郷で、その反対語ディストピアは暗黒郷。文学の世界も両方の特徴を併せ持った作品は多いのですが、どちらかにフォーカスを当てた作品はユートピア文学またはディストピア文学とされます。ディストピア文学の代表作は言わずと知れたG.オーウェルの1984年やO.ハックスレーの素晴らしい新世界など。言葉のラベルを比べれば、一方の世界は光り輝き、もう一方はただ暗く悲惨です。人間は生まれた日から死に向かって歩く旅人、という表現があります。これはまぎれも無い事実。しかし「私を離さないで」を観終わって、大切なことを思い出させてくれてありがとうという温かい気持ちで満たされました。本も読んでみたいです。

2 件のコメント:

  1. 原作、読みました(映画も観ました)。
    もしよかったら、8月にアメリカに戻ったらお貸ししますよ ^^
    現在日本にいますが、蒸し暑いですよ〜。

    まり

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  2. まりさん

    コメントありがとうございます!日本大変な暑さと聞いています。体調崩されないようにしてくださいね。

    本、いかがでしたか?私も日本語訳をお友達がかしてくれて、原作は図書館で借りました。これからじっくり楽しもうと思います。今度まりさんの感想を聞かせてくださいね。

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